DUNGEON MASTER SCREEN
+Escape from Thunder Rift
(雷鳴峡谷脱出行)

対象レベル5
対象人数4-6
デザインTeeuwynn
編集Andrew Steven Harris
製品管理Bruce Heard
表紙Larry Elmore
挿絵Arnie Swekel
印刷Gaye O'Keefe
製作Paul Hanchette
Special Thanks ToTim Beach, Carl Buehler, Pete Curtin, and Collin McComb
TSR 製品番号9437
発売日1993 年 2 月

概要

D&D 第 5 版にあたる「Dungeons & Dragons Game」は,あらたに D&D をはじめようという初心者を対象にしており,サポートされているのは 5 レベル・キャラクターまででした。さらに,展開されるサプリメント群も,従来のノウン・ワールドではなく「Thunder Rift(雷鳴峡谷)」という地域を舞台とした,低レベル・キャラクター用のものばかりでした。では,D&D Game で 6 レベル以降もゲームを続けたいプレイヤーはどうすればいいのでしょうか? Thunder Rift を探検し尽くしてしまったら? その問いに対する解答のひとつがこの「DUNGEON MASTER SCREEN」付属のシナリオ「Escape from Thunder Rift」なのです。

ある日,PC たちのもとへひとりのドワーフがやってきます。彼によると,古代のある魔法使いの要塞――ドワーフたちはそこを守るとかつて約束したのです――に邪悪な魔術師チェインブリンが押し入り,ドワーフを殺したというのです。しかもチェインブリンは要塞に隠された魔法の門を通じて,異世界から軍隊を呼び寄せようとしているらしいのです。PC たちはチェインブリンのたくらみを阻止することができるのでしょうか。

解説

シナリオの説明に入る前に,少しはマスター・スクリーンの紹介もしておきたいと思います。計 4 面のスクリーンのプレイヤー側には,AC シリーズのスクリーンのような華麗なアートは描かれておらず,そのかわり巨大な D&D のロゴが鎮座しています。そして裏側ですが,どういうわけか D&D Game ではサポートされていないはずの 36 レベルまでのキャラクター用の表が所狭しとならんでいます。これはいったいどういうことでしょうか。

実はこの作品は,あくまで初心者向けである「Dungoens & Dragons Game + Tunder Rift」から,8 年にわたって展開してきた D&D 第 4 版の集大成である「Rules Cyclopedia + Gazetteer」への橋渡しとなるサプリメントなのです。アドベンチャーの前半で邪悪な魔法使いチェインブリンを追い詰めた英雄たちは,「ちょっとした事故」のおかげでまったく見知らぬ世界に飛ばされます――あらたな,そして古参ゲーマーにとってはおなじみの冒険の舞台,ノウン・ワールドへ!

アドベンチャーの後半では,ただ単に世界が広くなっただけではなく,D&D Game では省略されていた技能ルールなどが紹介されており,少しずつ Rules Cyclopedia に慣れていけるような仕組みになっています(必要とあれば《武器習熟(Weapon Mastery)》ルールの導入も可能です)。このように,新しいルールブックを買わせるにあたってできるだけゲーマーの抵抗を減らしていこうという試みはおおいに参考になる部分があるかもしれません。

さらにこのアドベンチャーでは,もうひとつおもしろい試みがなされています――そう,AD&D ではすっかりおなじみの手法,「マルチメディア展開」が行われているのです。ノウン・ワールドへとやってきた英雄たちがはじめて訪れるのは,なんとバイウォーターの村――小説「竜剣物語」の幕開けとなった場所です。もちろん,村唯一の雑貨屋「ベイルドン商店」,さびれた「ギャラマン製陶所」も登場します。問題は,現在が小説以前の時代なのか,それともずいぶんと未来の話なのか,ということですが…それはじっさいにプレイしてのお楽しみということにしておきましょう。

表紙が「コンパニオン・ルール・セット」の使いまわしだったり,スクリーンをすでに持っている人たちがわりと多かったりするせいで,意外と注目度の低いこの製品ですが,なかなかどうして,おもしろいものではないかと思います。みなさんもぜひいちど遊んでみてください。


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