Wrath of the Dragon God (邦題:ダンジョン&ドラゴン2)レビュー

mixiの「クソ映画を率先して観る人たち」コミュニティのキーワードにも指定されている前作から5年を経て,D&D映画の第2弾が登場しました。といっても劇場公開されたわけではなく,Sci-Fiチャンネルで放送されただけのようです(実写版「ゲド戦記」と同じ)。ノリノリのジェレミー・アイアンズ先生を欠いたにもかわらず,IMDbの10段階評価は前作の3.7から4.9にアップ! アップしてもこのスコアだということは気にしない!

あらすじ。前作の中ボス,Damodarはアンデッドとして生きていた(ていうか死因覚えてneee)。彼は,Turan人がFalazure(the Dragon God of Decay and Undeath)を封じるために作ったというBlack Orbを手に入れ,Falazureを復活させIsmir王国を滅ぼそうとする。それを阻止せんと5人の冒険者が立ち上がった。はたして彼らはDamodarの野望をくじき,Ismir王国を救うことができるのか!

…モジュール(対象レベル7-9)とかの裏に書かれてあっても違和感がないですね。ぜんぜん。

とにかくB級テイストがあふれてこぼれてどうしようもない作品です。プロット,キャスト,セット,SFXのすべてがイイ感じで安っぽい。特に人間・女・バーバリアンとエルフ・女・ウィザードは,どっかの挿絵で見たことがあるような気がしてなりません。

しかし,D&Dの再現度という点では,前作をはるかに上回っています。主人公からして「レベルが上がって土地をもらったけど書類仕事に飽きて大喜びで冒険に出かけるファイター」という「あるあるww」な設定。その奥さん(Mystic Theurgeをめざして修行中のウィザード/クレリック)は,いきなり主人公にむかって「魔法には2種類あるの。秘術呪文と信仰呪文」とか一席ぶってくれたあげくに,2人で「この触媒けっこう高いのよ」「僕が領主でよかったよ」というやりとりをかましてくれます。ダメだこの映画は(誉め言葉)。

モンスターも,モンスター・マニュアルから何種類かが登場しますし,エルフ,バーバリアン,ローグの特殊能力もきちんと発揮されます。呪文は動作要素が必要ですし(片手が空いていればよいという描写もあり),ディテクト・マジックでPC…じゃない冒険者たちの装備が光るという細かい演出も。

なんだってこんなに再現度が高いのかと,DVDのおまけのメイキングを見てみると,シナリオライター,監督はおろか美術スタッフ,役者にいたるまで全員がD&Dのルールブック持参というシュールな光景が広がっていました。演技指導のかたわらPHBに読みふける役者,群がるロケ地の子供が挿絵を見て興味津々という異様なシーンには興奮を禁じ得ません。いやもうほんとたまらん。

おおまかなプロットも実際のところそんなにひどくはなく,冒険者グループと,調査団のウィザードたち+主人公の奥さん,Damodarという3.5軸がうまくまわっています。また,主人公たちがいきなり最終目的に向かって突き進んだりせず,AをするためにはBが必要で,そのためにはCに行かなくては…という一本道キャンペーンのごとき流れを踏襲していて,ふつうにモジュールとして発売されても遊べてしまいそうです。

出演者は基本的にTVの役者さんばかりなので,他の映画などで見たことはないのですが,主人公のBerekはそつなくいい男ですし,奥さんのMeloraの一途さ,ローグのNimのAL:CGらしいひねくれた態度もなかなか見物です。クレリックのDorianは…たいへんコメントに困るキャラですがこれはこれで。惜しむらくはデミヒューマン,ヒューマノイドの少なさでしょうか。ゴブリンかノールぐらいは見てみたかった。

撮影地のリトアニアも,素人が見て違和感がないくらいには中世ヨーロッパな雰囲気を色濃く残していて,とかく作り物っぽくなりがちな衣装やCGをうまくとけこませています。昨今ニュージーランドあたりがファンタジー映画のロケ地の定番ですが,あそこまでスケールが大きくないのがかえってこの映画の空気に合っているようにも思えます。…贔屓目もたいがいにしておけと言われそうですが。

エンカウンターにいまいち脈絡がなかったりバランスがデッドリー(笑)だったりしますが,素人DMのリプレイ映画,くらいの心構えでいれば(いやそこまで後ろむきでなくても),じゅうぶんに楽しめることと思います。きっと日本語版は出ないでしょうが,万が一出たら仲間内で1枚ぜひどうぞ。(追記:出ちゃいました

ところでDamodarの世話をしている死にたくなるほどブサイクな生き物はハーフオークだそうです。ヒドスwwww