Supplements for the supplement
手に入るだけのものでなんとかするのがプロってもんだろうが。
2001年末に発売された,「メタルヘッド・マキシマム」サプリメント第1弾「マインドクライム」は,そのページの大部分を7編からなるキャンペーンシナリオに割いています。基本ルールブックだけでもありあまるほどのデータ量を誇るRPGのサプリメントとして,あくまでデータ追加は最小限に抑え,簡単に使えるシナリオを数多く提供して遊ぶための敷居を低くしようという方針は決して的外れなものではありません。そう,シナリオが本当に「簡単に使える」ものであれば。
昔から旧版で遊んでいるみなさんはすでにご存知かと思いますが,メタルヘッドの公式シナリオにはろくなものがありません。旧ボックスセットに付属のものは言わずもがなとして,「ハードブレイク」のようにシナリオ集として発売されたものについても,到底Ready to playとは言いがたいものばかりでした。そしてその悪しき伝統は21世紀にも見事に受け継がれ,まずは練習とばかりに基本ルール付属シナリオをそのままプレイしてしまいプレイヤーから容赦のないツッコミを受け泣きながら家に帰るGMがあとを絶たないのです。…いえ,私がそうだとは言ってませんが。
そこで,このページでは,マインドクライムを購入したにもかかわらず未だキャンペーンシナリオをプレイする機会に恵まれていない運の悪い(良い)GMのみなさんのために,プレイ前に埋めておくべきシナリオの穴を提示したいと思います。といってもぶっちゃけ他にやることがないから仕方なく読み始めた本に八つ当たりしているだけなのですが。「うちではこうやりました」「こういうのはどうでしょう」というご意見や「ばーか,誰がメタヘのシナリオそのままでやるかよ」というツッコミをお待ちしております。
なお,言うまでもなく+激しくネタバレ+です。プレイヤーとして参加予定のある方はここでやめるか,もしくは読んでしまったらあなたのGMがどんなフォローをするのか楽しみにしていてください。
First Album
メガ=シティ〈サン=アンジェルス〉が世界に誇る歌姫シャナ・シャルロータの登場する最初のシナリオ。とりあえず名の知れたNPCを出しておけば旧版からのファンは満足するだろう…と考えたかどうかはわかりませんが,ツッコミどころに事欠きません。
- 報酬の株券
- 「そこらの市民がおいそれと持てる代物ではない」んだそうです。依頼人,のっけからあやしすぎます(お約束という見方もできますが)。それに株券って売ろうと思ったら譲渡証明書とかいらないのでしょうか。偽造するにしても持ち主の名前がわからないと困ると思うのですが。
- 旅の途中で
- とあるニュースを聞いた依頼人は明らかに動揺するそうです。あからさますぎて涙が出ます。イノセントにスキャンソート(異能力 / テレパシー)使われたらどうするんでしょうか。精神防壁スキル100%とか持っててかまいませんか?
- 警察にて
- どうして警察は依頼人の足取りを追うことができたのでしょうか。マルチーノが株券の換金でヘマをしましたか?
- CDについて
- なんだってこの解析装置とやらはCDを普通に演奏しやがるのでしょうか。そして何だってパスワードなんか要求してきやがるのでしょうか。B級SF映画のような演出もいいですがもうちょっとリアルな仕掛けを考えましょう。
- W氏の行動
- W氏はどうやって依頼人の行き先を突き止めたのでしょうか。それから,W氏が依頼人にどつかれたという事実は,きっとシナリオが終わっても明らかになりません。どつかれたらどつき返したくなりますよねえ,普通。
- その他の情報
- 〈ゴシップ〉SR1で手に入る内容にしてはやけに精度が高いのですが。というかもうピンポイントすぎて,TST(Tuesday Suspense Theater,サン=アンジェルスで放送されている人気番組らしい)のラスト20分みたいです。
- ハッキング
- どこのバカがほいほいと支配企業のターミナルにハッキングをしかけるのでしょうか。というか支配企業ってそんなもんでいいんですか?
- 襲撃
- どう考えても家に押し入るほうが簡単なのですが。というか目的は人じゃないでしょうに。
- サブコントロールルーム
- 押さえるとなにがうれしいのでしょうか。
この他にも,ちょっと慣れたGMじゃないと言い訳が思いつかないような部分がいくつかありますので,自称初心者GMのかたは,プレイ前にじっくりとシナリオを読んで,がんばってプレイヤーの質問を予想してみてください。
Evergreen
everは形容詞じゃないと思います。それはともかく,イオンのことは忘れましょう。あんまりイオンイオン連発してると理系のプレイヤーにバカにされます。あなたのPCがPrius Deckだったりした場合,哀れみの視線すら受けることになるかもしれません。
- 依頼
- ヴァイスがわざわざ部外者であるPCに手伝ってもらう理由がわかりません。まあ,前の任務でヘマをやらかして,汚名返上を目指しているとかそういうところでしょうか。ありがちですが。
- 期限
- 1週間ってのはあきらめがよすぎやしませんか? まあどっちにしても3日で終わるでしょうけど。
- 書類について
- 筆跡がちがうからなんだというのでしょう。というかこの時代自筆の文字なんて見る機会あるのかしらん。あと,染みを分析しただけで土が汚染されていないことがわかるってのは,いくら22世紀でも厳しいのでは。分析化学を専攻した方,いかがでしょうか。
- 資材について
- 既存の施設云々の設定がまったく生かされていません。せっかくですので活用しましょう。
- ヘリ
- ビーコンって発信機のことだと思ったのですが。
- 遺品
- 電子ダイアリーて。というかこれを見るためにPCが努力する余地がほとんどありません。なんとかしましょう。
- ブローカー
- これまた破格の値段で異様に詳しい情報をピンポイントで教えてくれます。これでは地道な情報収集とか謎解きとかそういう楽しみがまるごとスポイルされてしまいます。一本道シナリオと言われてもしょうがないです。
- 工作隊
- 捕虜にされたらなぜPCの行き先がわかったのかと小一時間問い詰められること必至です。
- 博士のビデオ
- 寝るな。
- 居住室での異変
- だからどうしてそんなにあからさまに悪人っぽい行動をとるのでしょうか。何のためのINT17ですか? なんのための〈交渉〉90%ですか? B級映画が大好きな人以外はがんばってPCを論理的に説得してみましょう。
- 緑に抱かれて
- …もうなにも言いません。やりたい人はやってください。
The tomestone in the twilight
シティ内で完結するこじんまりとしたシナリオ。支配企業のかつてのエリートが死んで,その近親者が依頼人というパターンはそろそろ飽きてきましたが。
- 出会い
- 救急車呼ばれます。プレイヤーにER愛好者がいたら心臓マッサージとかやりかねません。そもそもサイバーパーツの一般的な世界でPCの目の前で人を殺すのは,ファンタジー世界で高レベル僧侶PCの目の前で人を殺すのと同じくらい大変です。お約束だと言い切る度胸がないGMは言い訳を考えておきましょう。いっそここでの台詞はぜんぶ遺言ビデオとかでもいいかも。
- 現場検証
- シティ内での事件です。警察が真面目に動いているところを見せるべきでしょう。でないとSimCity愛好者から文句が出ます(これだけの人口を維持するのに警察署がどれくらいの密度で必要なのか云々)。
- 聞き込み
- 近所の人は人相の悪い訪問者が情報屋だとどうしてわかったのですか?
- ネットワークでの情報
- なぜ一市民の職歴やら病歴やら死亡歴(いや,1回しか死にませんけど)が簡単に入手できるのでしょうか。もしかしてハンターにはそういった情報が公開されることになっているのですか?
- 情報屋
- いますべての情報が明らかに! というわけでどうやらメタルヘッドのシナリオに「断片的な情報をつなぎ合わせて仮説を組み立てる」とかそういう楽しみを期待するのは間違っているようです。
- 手紙
- 脳死した人間から記憶をコピーして移植するというのは一体いつの時代のテクノロジーですか? 22世紀ではないのは間違いないような気がしますが。
- 謎の手紙
- メールを印刷して読む人なんて,21世紀でもオールドタイプ扱いなのに。端末内の記憶領域から復元とかで問題ないのでは。まあルールブックにはUndeleteとか載ってませんが。
- 記憶の奪還
- AIのサーバーイメージがぼやけるという話は初めて聞きました。次のシナリオではおもいっきりくっきりしてますが何か?
- 赤錆広場の決闘
- またしてもお約束のように,悪役がなぜかPCの居所を突き止めて,親切にも交渉を持ちかけてきます。なんだか「メタルヘッド風シナリオジェネレータ」とか簡単に作れそうな気がしてきました。
つくづく思うのですが,高平鳴海という人は熱意だけで仕事をやってる気がします。編集担当であろうF.E.A.R.の人,お願いだからなんとかして止めてやってくださいと言いたいです。
ほむらのねぐら | The Union